牛飼い指南書

農業で生産性のある豊かな人生を

子宮への薬物(イソジン)注入

子宮が汚れている時に良くイソジンを使いますよね。

イソジンは抗菌剤であり、非常に高い抗菌作用があります。

 

その強い抗菌作用のイソジンを、人間も手術や喉のうがいなどで使いますよね。

 

特に、喉のうがいや傷の手当てをしたときに、ジンジンするような刺激を感じたことがあると思います。

 

これはイソジンが組織を傷つける作用も併せ持つためです。

これが、悪いのではなく、破壊と治癒は一体でありますから、組織のサイクルを早めるようなイメージです。

 

イソジンの組織破壊による癒着は起こるのでしょうか?

 

実は、イソジンによる癒着は一般的には稀であり、正しい使用方法に従えば発生することは少ないです。

ここでいう正しい使い方とは、特に用量ですね。

 

原液で使うなら50cc

体の負担を考えるならば、5ccを生理食塩水(生理食塩水は多くても良い。子宮内を大きく洗浄したい時などは多め)で薄めたものを使うと良いです。

 

イソジンは基本的には、外部の皮膚や傷口に対して行われるため、内部の臓器に直接適用することはあまりありません。

牛においても、子宮内膜炎の治療に使うと、牛は子宮内がジンジンするのか尻尾をあげたままになったりもします。

 

イソジンは適切な使用方法に従えば効果的な抗菌剤であります。

 

ただし、内部の組織や臓器に使用する場合は、獣医さんに相談してみましょう。

なんで牛骨スープ流行らないの?

ラーメンにおいて、鹿児島なら豚骨ラーメン、インスタントは鶏ガラスープ、魚介出汁などが有名ですよね。

 

牛はなぜ使われないのでしょうか?

テールスープは聞くことはあると思いますが、これまた一癖あります。

 

牛がスープの出汁に使われない理由はいくつかあります。

 

まず、牛のスープの作り方の難しさです。

 

牛の骨は硬く、十分な時間をかけて煮込まなければ、風味やコクが出ません。

一方で、豚骨や鶏ガラのスープは比較的短時間でコクを出すことができます。

 

そのため、多くのラーメン店では効率的な生産を考えて、豚骨や鶏ガラのスープを使用する傾向があります。


また、そもそも地域によっての流行りが存在します。

 

ラーメンは日本全国で様々なスタイルが存在しますが、地域ごとに好まれるスープの味や特徴が異なることがあります。

 

例えば、豚骨ラーメンは九州地方が発祥であり、その文化的な背景や地域の好みによって広まりました。

 

牛肉はというと、高価であり出汁を取ることすら勿体無いと考える傾向が強く、コアなラーメン店など以外ではお目にかかれません。


つまり、大きな理由が、牛肉は豚肉や鶏肉に比べて高価だということです。

 

牛肉を使用したラーメンを提供する場合、原材料のコストが高くなり、価格もそれに比例して上がる可能性があります。

 

そのため、多くのラーメン店がコストを抑えるために、他の肉のスープを選択するわけです。

 

ラーメンの原価のほとんどがスープであるため、利益を求めると、牛は使えないんですよね。


加えて、牛骨は廃棄や利用に制限があります。

現実的に、二次利用が難しいという背景もあるんですよね。

 

これは、BSE狂牛病)が実は牛骨(脊髄など)に感染リスクがあるからです。

 

こういった背景が重なり合い、牛がスープに利用されることが少ないのです。

アニマルウェルフェア

アニマルウェルフェア、牛飼いや畜産に関わる人なら聞いたことがある言葉ですね。

 

最近では、畜産とは無縁の人も聞いたことがあるのではないでしょうか?

 

まず、アニマルウェルフェアを簡単に言葉にするならば、

「生き物を畜産物として利用させてもらうことを前提としたならば、その生き物を飼っている間は幸せにする」

といったところでしょうか。

 

簡単な言葉にしても難しいのは、倫理観が人それぞれで違うからです。

 

この言葉を測るものさしが違えば、解釈が変わりますから、当然「否定的」な意見もありますよね。

 

ただ、このアニマルウェルフェアは現在のところ努力目標でしかありませんので、強制力はなく、誰かに非難される必要もありません。

 

しかしながら、多様性が求められる時代においてアニマルウェルフェアを無視できないのも事実です。

 

なぜなら近い将来、アニマルウェルフェアのような優しい規程ではなく、強制力のある規定が国際的に定められると予想されるからです。

 

これは、昨今の国内外を問わない、注目と意識の高まりから言えることです。

その時に備えなければなりませんよね。

 

さて、アニマルウェルフェアには5つの自由が提唱されております。

 

1.飢えと渇き、栄養不良からの自由

2.恐怖、及び苦悩からの自由

3.身体的及び熱の不快からの自由

4.苦痛、傷害及び疾病からの自由

5.通常の行動様式(繋ぎは運動できないからやめてあげて)からの自由

 

以上が5つの自由です。

私がこれをみて思い出す漫画がありまして、それは

約束のネバーランド」です。

 

約束のネバーランドという漫画は、

「人が鬼に飼われて出荷される」

というなんとも空想的で皮肉的な、大好きな漫画です。

 

漫画の中で、出荷される子供はストレスを与えられる事はなく、むしろ教養などを与えた上で健康的に育てられます。

 

内容のことはこれ以上はネタバレになるので言えませんが、こういったことを今、世界がアニマルウェルフェアというかたちで取り組んでいるのです。

 

不思議なもので、こういった漫画をみると人は「悪とはなにか」がわからなくなります。

 

ブレるんですよね。

 

だからこそ、アニマルウェルフェアは5つの自由を曖昧かつ正確に提唱しています。

 

では、5つの自由を達成するにはどうしたら良いか。

 

以下が対応例となります。

1.新鮮な餌と水を与えよう

2.不要なストレスを与えない(意味のない電気ムチなどの単に家畜が嫌がるもの)

3.環境を整える(扇風機やミストなどで暑熱、ヒーターによる暖房)

4.病気の予防と治療をしよう

5.飼養面積は充分に確保しよう

 

簡単にまとめてもこれだけの文になってしまうのがアニマルウェルフェアであります。

 

そして、一言で言い表すのが難しいのがアニマルウェルフェアであります。

 

皆さんは、アニマルウェルフェアについてどういった意見を持っていますか?

 

そして、何を語れるでしょうか?

 

答えがない議論は面白いですね。

3度付けの考え方(種付けの話)

どうしても止めたい、或いは、発情が長いといった場合に2度付けをすることがあります。

 

自信がない時もこの方法をすることで、種付けの確率を上げることができます。

 

しかし、発情発見から早めに種付けをして、思ったよりも長く発情が続いてしまった場合、3度付けまですべきかどうか悩みますよね。

 

実はこの場合3度目をつけないのは、場合によっては種付きの確率は下がってしまいます。

 

考え方としては、2度付けの時点で発情発見から12〜18時間経過している場合、通常であれば排卵が起こるタイミングまで精液は子宮内で生存しているはずです。

 

しかし、発情がまだ続いている場合、2度付けの時点の精液の生存が怪しくなります。

 

ですから、3度付けのタイミングの発情だけを切り取って考えるならば、その時点が授精適期となりますので、「3度付けをしない」という判断は正しいとは、言えなくなってしまうのです。

 

このように、発情時点の状況を切り取ることで、追加の種付けが必要かどうかを判断しなければなりません。

 

もちろん、精液ストローの在庫と相談が必要ですけどね。

三元交配の歴史

黒牛が他の種類の牛に比べて小さいのは知ってますよね。

 

ホルスタインと黒牛を比べると違いがわかりやすいですね。

 

黒牛は人間の背よりも高くなることはないですが、ホルスタインは人間の背よりも高い個体もいるほどです。

 

黒牛は小さくて、身体が弱い。

 

それは昔から、近親交配が行われてきた歴史があるからです。

 

そしてその改善と、「黒牛」が産み出すためにおこなったのが、

「三元交配」です。

 

三元交配は他種の牛、黒牛とホルスタインとアンガス等を組み合わせて交配するものです。

 

これにより「雑種強勢」が起こり、親よりも優れた子牛が産まれます。

(遺伝的情報が遠いほど雑種強勢が起こりやすい。人間でもハーフは優れた能力を持っていることが多い)

 

黒牛においては、ホルスタインの血を混ぜることで、黒牛の資質を保ちつつ大型化を成功させました。

 

現在に至ってはほぼ完成された黒牛ですが、稀に白斑がでることがあります。

 

これは、ホルスタインの血が後世遺伝するためです。

 

それでも黒牛には変わりありませんが、黒牛として、生産牛として登録するときに、登録できないことがあります。

 

そういった牛を淘汰するのも、より良い黒牛づくりには必要なのです。

 

また、最近ではF1(first filial generation)という、黒牛のメスとホルスタインのメスの一代限りの掛け合わせを呼称する品種もでてきました。

 

F1は高い生産性を売りに市場に出荷されています。

 

今後も色々な形で三元交配をもとに雑種強勢が行われます。

これにより、和牛文化はより発展するでしょう。

竿を出す

牛が陰茎(性器)を露出することを、

「竿を出す」と表現します。

 

陰茎が露出するのは、通常は繁殖行動時です。

 

この時、牛は興奮状態に入り、陰茎が外部に露出するようになります。

ただし、この行動は「牛の意志」によるものではありません。

 

牛は「本能的」にこのような行動を取ります。

 

露出した陰茎を、牛の意思で陰茎をしまうことありません。

 

人間もそうですね。

 

牛の陰茎は通常は包皮に収まっており、興奮が収まると自然に引っ込みます。

 

この一連の露出を、「竿を出す」と表現するのは、

非常に良い表現ですよね。

「かんてつ」ってなに?

「かんてつ」って聞いたことありますか?

 

牛飼いで、藁(わら)を牛にあげている農家は知ってますよね?

 

「肝蛭」と書いて「かんてつ」と読みます。

 

寄生虫ですね。

 

田んぼに棲息していて、稲に付着しています。

 

このヒル(蛭)が付着した、稲藁を食べた牛がかんてつに当たると様々な疾病を引き起こします。

 

正確には、ヒメモノアラガイが中間宿主であり、その卵や個体が付着した稲藁を食べた場合が危険です。

 

対策としては、ヒメモノアラガイそのものを全て駆除すること。

 

しかし、これは非常に難しいです。

隣の田んぼも、全て駆除する必要がありますから、現実的な解決策ではありません。

 

現実的な解決策としては、藁を最低でも3ヶ月以上は乾燥(乾いた場所で保存)することです。

 

これにより、自然に死滅させるのです。

 

では、WCSはどうでしょう?

 

実は、WCSの場合も3ヶ月を目処に給与時期を考えることができます。

 

というのも、WSCは発酵の過程で3ヶ月程寝かせる為、その過程で問題の個体は死滅するからです。

 

かんてつの症状としては、痩身や下痢、食欲不振など深刻な場合もあります。

 

もしも、そういった症状がみられた場合は、点滴や虫下しを早い段階で検討しましょう。

正常性バイアスと牛飼いの事故

人は自分自身が危険や事故に巻き込まれる可能性を過小評価し、他人事として考える傾向があります。

 

これを正常性バイアスと言います。

 

これは人間の自己防衛の一種であり、自己イメージを保護するために現実を受け入れにくくなる心理的なメカニズムです。

 

簡単に言えば現実逃避ですね。

 

事故や災害に関連して、他人が関与した場合、自己防衛の一環として、

「私はそんなことをしないから大丈夫」という心情になります。

 

この考え方は、自分を安心させるために適応的な反応と言えますが、時には自己保護の過程で現実を過小評価してしまうことがあります。

 

正常性バイアスによって、人は自分自身が危険にさらされる可能性を排除しようとする傾向があります。

 

その結果、予防措置を怠ったり、注意を欠いてしまい事故が起こります。

 

例えば、牛飼いにおいて、牛と接するのは当たり前ですよね。

 

他の農家で牛と人間との間で事故が起きても、

「自分は大丈夫、うちの牛は大丈夫」と、楽観視してしまいます。

 

また、「気をつけているから大丈夫」といった思考にもなります。

 

こういった心理的なバイアスに気付き、事故防止のためにも現実を客観的に評価することが重要ですね。

人工授精後にイージーブリード(プロジェステロン)を使うとどうなるでしょうか?

種がなかなかつかないが、発情はちゃんと来る。

こういった場合のほとんどが、卵胞が着床妊娠を維持できていないんです。

 

基本的な考えとして、

排卵しているならば、授精をしたら受精している」というものがあります。

 

しかし、それが着床するか、着床を維持できるかが問題です。

 

それを解決するために、人工授精後にトンボ(イージーブリード)を使うわけです。

 

卵胞ができたところから説明すると、

仮に、その卵胞が排卵したとします。

 

排卵が済んだ卵胞細胞は黄体細胞になります。

簡単に考えるならば、卵胞細胞が「黄体」へと変化すると思ってもらえれば良いです。

 

その後8〜10日程経ち、黄体は成長しプロジェステロンを産生します。

このプロジェステロンが胚(受精卵そのもの)の発育をサポートします。

 

つまり、このプロジェステロンを一定に保つ、あるいは、補うためにイージーブリード(プロジェステロン)を投与するわけです。

 

プロジェステロンは、「胚が存在するとき」は、胚の着床妊娠の維持を助けます。

 

一方、胚が着床していなかった場合には、このプロジェステロンの関与によって、黄体退行と卵胞発育がサポートされることで、次の「発情」がくるわけです。

 

このように、黄体と卵胞のステージに合わせて、獣医さんはどんな治療を行うか考えているのです。

 

健康の秘訣は「ちびちび飲み」

哺乳瓶のミルクの出る量は多すぎると良くないって知っていますか?

 

ちびちび飲みができるくらいの量が出る哺乳瓶の方が良いとされています。

 

そのメリットはいくつかありますので、紹介します。

 

まず、誤嚥のリスク低減できます。

少量のミルクをゆっくりと飲むことで、子牛が誤ってミルクを気道に送り込む「誤嚥」のリスクが減ります。

 

ちびちび飲むことで、赤ちゃんの嚥下機能が十分に発達するまでの間、安全な飲み方ができます。


二つ目に、肺活量の鍛えるメリットがあります。

 

少量ずつ飲むことで、赤ちゃんの呼吸と嚥下の調整が促されます。

 

このようなトレーニングによって、赤ちゃんの肺活量が徐々に増え、健康な呼吸の発達を助けます。


三つ目は、母乳と近しくできるメリットです。

 

母乳の出は少量ずつであるため、ちびちび飲みができる哺乳瓶は、赤ちゃんにとって母乳との飲み方の類似性があります。

 

このような類似性は、母乳育児からミルク育児に切り替える場合にも、赤ちゃんの適応を助けることができます。

 

このように、ちびちび飲みは子牛にとってはメリットがあるんです。

 

哺乳期は短いですが、少しだけ時間をかけて飲んでもらうだけで、元気な子牛に育ちますよ。

人工授精の方法

人工授精の方法には、直腸膣法と頸管鉗子法がありす。

 

この二つの方法は、主にどちらが現場で使われているかお分かりかと思います。

 

直腸膣法が圧倒的に多いですね。

 

これには理由があって、

一つは、道具が少なくて良いこと。

二つ目に、子宮を傷つける可能性が低いこと。

三つ目に、道具が安価なため授業で揃う道具で事足りる為、それでしか教わらないこと。

 

以上が、主な要因で、直腸膣法は学ぶ過程で選ばれることが多いというのが特徴です。

 

一方、頸管鉗子法の特徴は、

一つは、直感的で簡単。

二つ目は、頸管に傷がつく可能性がある。

三つ目は、道具が多い。

 

以上の理由から分かる通り、準備がめんどくさいという特徴があります。

 

しかしながら、それぞれにはメリットもデメリットもある。

 

直腸膣法のメリットは、子宮や卵巣のようすをチェックできる。それが、熟練されると視覚化されていくこと。

デメリットは、膣鏡を必ずしも必要としないため、膣内の汚れや、頸管の形状を確認する癖がなくなることです。

 

一方、頸管鉗子法のメリットは、膣鏡を必ず使うため毎回子宮の様子を目視で観察して異変があれば対応でき、スケッチもできます。また、確実に子宮頸管にアプローチが可能なため、初心者でも比較的直感的に仕事ができます。

デメリットは、頸管を傷つける可能性があることと道具の値段がそこそこ高いです。

 

私が両の方法を現場では使うので、少しだけ、使い分けの流れの話をすると、

まず、膣鏡で見るのは絶対行います。

 

その時頸管の入口の形状を覚えます。

頸管鉗子法で頸管まで鉗子が届きそうな牛に関してはそのまま、鉗子法で種付けをします。

 

直腸膣法はいつ登場するかというと、太り過ぎの牛にはほぼ必ず直腸膣法です。

 

黒牛が大型化しているため、鉗子が子宮に届かなかったり、太っている個体は肉壁によって膣鏡でみても、頸管が掴めないことがあります。

 

そんなときは、焦らず直腸膣法に切り替えます。

 

このようにして、両方できるようにしておくと、人工授精のスキルが向上しますし、対応力も上がります。

 

何事も勉強ですね。

これからもっと画期的な授精方法が出てきた時は、是非試したいものです。

口蹄疫の状況

口蹄疫とは、牛の伝染性の病気です。

そして、この病気にかかると食欲不振に始まり、外貌に変化(口に水泡、痩身など)をもたらし、やがて死に至る可能性が非常に高いです。

 

口蹄疫は非常に伝染性が高く、感染した動物から直接または間接的に他の動物に広がることがあります。

 

感染源として、感染した動物の体液、糞便、水源などが挙げられます。

 

発生した場合、その農家、牧場だけでなく、周辺の地域の牛にまで感染が広がる危険性があります。

 

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この写真の赤い部分では現在でも発生のレポートがある地域であります。

 

日本は幸いなことに近年の発生はありません。

 

しかしながら、みてわかる通り、隣国の韓国や中国でも発生していることから、海外からの侵入の可能性は今後も消えません。

 

海外渡航歴のある方の、牛舎の訪問には充分気をつけたいですね。

 

一度、口蹄疫が入れば、本当に牛飼いはできなくなります。

 

それも日本全国で「黒毛和牛」の生産がストップするわけです。

 

牛飼いだけでなく、和牛が好きな方もそうでない方も、日本の資源を守るために協力していきましょう。

牛と蛋白質

蛋白質は、牛の体系の維持、成長、繁殖において必要な栄養素です。

 

また、蛋白質は牛の体の成分の中で、水と脂を除いた80%を占めています。

 

蛋白質の役割は、主に以下の通り。

①筋肉運動

②ホルモン作用

③生命活動です。

 

また、牛のような反芻動物は特徴的な消化方法をもちます。

 

まず、摂取した蛋白質は第一胃(牛は胃が4つあります)で、分解されアンモニアとなります。

 

そのアンモニアはルーメン微生物の構成蛋白質(微生物蛋白質)となり、小腸で吸収されます。

 

この微生物蛋白質必須アミノ酸が豊富で良質であるため、いかにルーメン微生物を活性化させるかが牛の健康において重要であるかを考えること、それが課題でもあります。

 

(微生物蛋白質を合成する際には、飼料の中の炭水化物をエネルギーとして使います。)

 

牛は人間が食べない草をエネルギーに変換しているわけです。

 

本当にもー、無駄がないですね。

乾物量が多すぎると?

飼料の中で、「水分を全く含まない乾物」のことを

ドライマター(DM)と言いますよね。

(実際には水分を含まない乾物というのは存在しないと言っても良いでしょう。)

 

牛にはこの乾物量の考え方が非常に重要です。

 

もしも、給与する乾物量が多いと、牛は餌を残します。

すると、お腹が満たされた牛は、本来摂取しなくてはならないその他の養分を取り込むことが出来なくなるのです。

 

肉用牛において、乾物量の目安は体重の1.4〜3.0%です。

 

しかし、自然由来の飼料をあげることが多く、環境要因の影響が大きいため、かなり数値に幅があります。

 

それを前提として、

体脂肪率が高いほど、乾物摂取量は低下すると言われており、配合飼料の給与量には注意が必要です。

 

太っているほど、配合飼料が好きな傾向があるということですね。

 

まとめると、

乾物をたくさん食べている時は「安心」

乾物しか食べない時は「給与方法を見直す」

乾物を食べない時は「配合飼料を制限」

 

また、乾物(草)そのものを見直すことも必要です。

 

良い牛は、良い草からと言いますからね。

配合飼料はアップグレード、粗飼料はダウングレード

時代が進むにつれて、餌は高騰していますが、アップグレードされているでしょうか?

それともダウングレードされているでしょうか?

 

配合飼料は、その成分は非常に安定し、安心して給与できるようになっていっているのではないでしょうか?

TMR(完全飼料=飼料と粗飼料を混合したもの)も、最近では多く活用されていますね。

 

一方、粗飼料はどうでしょう?

 

実は国土の限られた日本では農地が減ることで、国産の粗飼料はダウングレードしていっているんですよね。

 

というのは、まず還元的な話をした場合、農地が減ると、堆肥を出す場所は限られていきます。

 

堆肥を同じところに出せば、その土地の成分はかなり変わってきます。

 

となれば、その土地でできた粗飼料を安心して食べさせられなくなります。

 

最近は、牛舎の床を厚くし、しばらく堆肥出しをしない方法を採用している牛舎が多いです。

 

しかし、長年堆肥を堆積させる場合、気をつけなければならない点があります。

 

それは、「濃縮」です。

 

牛舎に日光が入り、堆肥の水分が蒸発し、その上に牛がまた排便をする。

この繰り返しにより、濃縮が起こり、堆肥の成分はどんどん濃くなっていきます。

 

これを、畑に還元するとどうなるか想像ができますよね。

 

つまり、ダウングレードされた粗飼料の問題を解決するためには、堆肥の行方を考えなければならないということです。

 

私の個人的な見解では、個人単位の解決は難しいと思っています。

 

こういった問題に税金を投入し、例えば、地域に堆肥処理施設や、バイオガス発電施設を作るなど、国単位で取り組む必要なあるのではないでしょうか?

 

そうでなければ、将来的に堆肥を海に捨てることにならざるを得ない結末になるでしょう。

 

それは、絶対に避けなければならないですよね。